『「表現の自由」入門』ナイジェル・ウォーバートン

 岩波書店。森村進、森村たまき 訳。
 本書における表現の自由とは、言論だけにとどまらず、演劇、映画、ビデオ、写真、マンガ、絵画等、広い範囲を指している。
 他人に危害を及ぼさない範囲で、人は何でもする自由がある、とJ.S.ミルは言った。もちろんそれは表現の自由を含めてのことだが、本当のことだろうか。ヘイトスピーチ、ポルノグラフィ、ホロコーストの否定、神への冒涜、インターネット、著作権等々、自由と倫理・道徳の間で微妙な線引きを迫られることが多々ある。それらの線引きは歴史的にどのようになされてきたのか。そしてどうすべきなのか。これらを具体例を示しながら、様々な人の主張がどうなされ、著者はどう考えるかについて述べられる。抽象的な議論ではなく実例を元にした議論なのでわかりやすい。もちろん表現の自由はどんなものよりも上位にある概念ではない。ではどこまで制限が加えることが適切なのか。これらについて深く考えさせられる本だ。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。