『まなざしのレッスン(1)西洋伝統絵画』三浦 篤

 東京大学出版会。
 14世紀から18世紀頃までの西洋絵画について、東京大学で行われた講義を元にまとめられている。ロココやオランダ風俗画くらいまでの時代だ。
 絵の見方なんて自由でいい、感覚のまま受け取ればいいんだ、という考え方があるけれど、それはちょっと違うんじゃないかという視点で、この本は書かれている。例えばここに1個のリンゴがあったとして、私たちはそれをただの色と形だけで捉えるだけで満足してしまっていいのか。リンゴといえばアダムとイブの食べた禁断のリンゴを指しているのかもしれないし、愛と美の神ヴィーナスを表しているのかもしれない(もちろんセザンヌの描いたリンゴのように、色と形に主眼を置いているものだってあるだろう)。そんな画面に隠されたモチーフの意味を探ることによって、画家が本当に描こうとしていたもの、あるいはその絵の裏にあるストーリーが浮かび上がってくる。そういう様々な絵の見方を身につけることによって、今までよりもさらに深くて自由な絵画の楽しみ方ができるようになるだろう、とこの本は言っている。例えばボッティチェリの『春』の一番右側で女の人を追いかけている青い男がいったい誰で、何をしようとしているのかを知ってこの絵を見るのと、知らないでこの絵を見るのとでは、楽しさが全然違うだろうということだ。
 そういう様々な絵画の見方を、神話画、宗教画、寓意画、肖像画、風景画、風俗画、静物画といったジャンル別に解説してくれている。カラー口絵12点、モノクロ図版175点という豊富な例を見ながら、楽しみながら著者の講義を受けることができる。この本を読むと、美術館などにおいて、今までとはまた少し違った絵の楽しみ方ができるようになることだろう。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。