『まなざしのレッスン(2)西洋近現代絵画』三浦 篤

 東京大学出版会。
 『まなざしのレッスン(1)西洋伝統絵画』(私の記事)の続編。今回は18世紀以降の西洋絵画を扱っている。ただ、20世紀以降になってくると、絵画というよもむしろ芸術一般、アートという趣をなしてくる。例えば便器を逆さまにした『泉』という作品で有名なマルセル・デュシャンなどは、もう画家とは呼べないだろう。
 印象派前夜、ロマン派の頃になると、伝統的な宗教画や神話画などにとらわれない同時代性のある作品が生み出されていく。そのあたりで絵画に関するとらえ方、考え方が大きく変わってきて、伝統絵画と近現代絵画とが根本的に異なるものとなっていると著者はいう。そして、それらの考え方が変わるということは、それらを観る私たちも絵画の見方を変えないといけないということになる。そのひとつの見方を著者はこの本で紹介している。
 そのように絵画が変質していく中で、作家たちが何を考え、何を目指していたのか垣間見られておもしろい。例えば抽象絵画を私たちが観るときそのわけのわからなさに戸惑うことも多いが、作家の意図を読み解いてみると、なるほど、そういうわけでこの絵がこのように表現されたんだと腑に落ちたりもする。平面性と立体性、抽象絵画の宗教性など、おもしろい視点も提示されていて、近現代美術を観るときの私たちのまなざしも変わってくるのが実感できる。
 現代においてはアートというものがなんでもありの状態に近くなっていて、それによってこれらのアートを観る私たちの視点も複眼的にならざるを得ず、受け取る側の困難も発生しているように感じた(上の文で私が、絵画、美術、芸術、アートという言葉をうまく使い分けできなかったというのも、この困難のひとつの表れであろう)。 この本は、これらの困難を少し減らして、絵画を観る視点を広げてくれる。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。