『イコノロジー研究〈上〉』エルヴィン・パノフスキー

 ちくま学芸文庫。浅野徹、塚田孝雄、福部信敏、阿天坊耀、永沢峻 訳。
 図像解釈学、すなわちイコノロジーは、美術作品の形、見た目ではなく、その作品の主題や意味というものを扱う。例えば美しい女性が左手に剣を持ち、右手に男の首の乗ったお盆を持っているフランチェスコ・マッフィの絵。これをただそのまま単なる女性の絵と見るのではなく、サロメとしてみたり、ユディトとして見たりしてみる。そしてその結果ユディトだと見なしたとすると、なぜそう言えるのか。美術は造形のおもしろさを楽しむだけでなく、その意味をも楽しめる。そんなことをこの本は教えてくれる。
 扱っている作品はルネサンス以前のものがほとんどを占める。「ピエロ・ディ・コジモの2つの絵画群における人間の初期の歴史」、「時の翁」、「盲目のクピド」という3つの主題について論じており、図版も多く微に入り細に入りといった感じの突っ込んだ議論がなされている。だから著者の論旨にうまく乗ってしまえば、躍動感のある美術の持つ「意味」の世界にどっぷりと浸かって楽しむことができるだろう。ちょっと小難しかったり、図版が白黒で小さいのでちょっと見づらかったりはするけれど、それを補うに十分なおもしろさがある。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。