『無限論の教室』野矢 茂樹

 講談社現代新書。
 アキレスと亀という話がある。亀にちょっとしたハンデを与えて競走するんだけど、アキレスが亀のいるところまで走ると、その間に亀はいくぶんかは先に進んでいて、さらにアキレスがその亀のいたところまで走ると、やっぱり亀はいくぶんかは先に進んでいて、いつまで経ってもアキレスは亀に追いつけないというパラドックス。そんな誰もが一度は聞いたことがありそうな話題をきっかけに、カントールの無限集合論、ラッセルのパラドックス、ゲーデルの不完全性定理まで進んでいく。
 小説風の話になっていて、タジマ先生の講義を女子学生タカムラさんとぼくの2人が受けるという対話形式の体裁になっている。時にはジョークを交えながらの軽妙なタッチで描く学園ドラマ(?)はなかなかに楽しい。無限論にも実無限派と可能無限派の2派があり、実無限派の方が多数派らしいのだが、タジマ先生は可能無限派の立場をとっている。私が学生時代に習った数学は明らかに実無限派のものだったので、タジマ先生の推す可能無限派の主張を聞くと新鮮だった。そういう考え方もあるのか。
 本書全体は軽いタッチで書かれているのだが、実のところ後半は結構難しい。ゲーデルの不完全性定理なんかは正直言ってよくわからなかった。でもこの本はおもしろいです。3人の絶妙なやりとりが何とも言えない。続編があったらよかったのに。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。