『フランス絵画の「近代」』鈴木 杜幾子

 講談社選書メチエ。副題『シャルダンからマネまで』。
 ふつうの美術史ではない。この本は2つの意図を持って書かれている。ひとつは、西欧絵画の権威である「歴史画」はフランス絵画が近代化していく上でどのように変化していったのかを明らかにすること。そしてもうひとつは、性や裸体や東洋人がキャンバスの中でどのように描かれてきたのかについて考察すること。そのために例として取り上げられているのは、シャルダン、フラゴナール、グルーズ、ダヴィッド、グロ、ドラクロワ、アングル、クールベ、マネといった画家たちである。テーマが歴史画と性にあるので、例示されている絵もそれに沿ったものになっていて、例えば静物画や肖像画で有名なシャルダンではあるけれど、掲載されているのは風俗画ばかりだったりする(シャルダンの風俗画は好きなジャンルなので別にいいのだけれど)。
 全体をとおして、歴史画の変遷については楽しく読むことができた。しかしながら、性、裸体、東洋人の描かれ方から、その時代に画家や鑑賞者たちが無意識に抱いていた偏見やバイアスともいうべきものを、フェミニズム的視点や西洋至上主義批判的視点から次々とやり玉に挙げていくその方法には、読んでいてちょっと不快になるところもあった。不快になるのは自分自身にもそういう偏見があり、痛いところを突かれているせいではある。そして著者はそういう気分になる読者の存在も当然のようにわかった上で書いているのだけれど、少しやり過ぎだろうと思った。 著者の言わんとしていることは十分にわかるのだけれど、もう少し大目に見てくれてもいいじゃん、シャルダンの絵に男性が登場してなくたったいいじゃん、ってちょっと思うのだ。違う方向から絵画を観るということを教えてくれる点では、この本は大いに成功しているわけだけれど。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。