『いま世界の哲学者が考えていること』岡本 裕一朗

 ダイヤモンド社。
 はじめの章では20世紀以降の哲学の流れを概観しつつ、21世紀、つまり今の哲学の潮流を解説している。そしてその後の章で、個別の事例について世界の哲学者がどう考えているのか紹介している。
 SNSやスマートフォンの普及、マイナンバー制度の創設、人工知能といったIT革命が人類に何をもたらすのかという問題。クローン人間の権利をどう考えるかや、再生医療で寿命が延びることや犯罪者となる可能性のある人は隔離すべきかといったバイオテクノロジーの問題。資本主義が生む格差は本当に悪なのかといった資本主義の今後についての問題。文明の衝突などの宗教の問題。環境保護論は正しいかといった環境問題。これらの問題に対して、今、世界の哲学者がどういったアプローチをしているのか、複数の立場から紹介している。
 ただ、著者は「いずれかの立場に与して、その観点から主張を押しつけるような書き方をして」いないと述べているが、そんなことはないと思う。クローン人間はいてもいいじゃないかとか、地球温暖化論は重要じゃないとか、そういった立場からの主張を著者もまた受け入れているように思われる。それは一般の日本人からするとドキッとする内容であろうから、もしかすると著者は一般常識と思われる考えも実は間違いなのかもしれないとの例を出すことによって、我々を揺さぶり、議論のバランスをとろうとしているのかもしれない。実際私はこの本を読むことによって、自分の考えとは違う人たちの主張の存在を知り、元々の自分の考えが正しかったのかどうか反省し直す契機になった。当たり前のように感じていたことが実はそうではないかもしれないと思い返すきっかけになった。何が正しくて何が正しくないのか容易にはわからないし、容易にわかろうとしてもいけないのだろう。いろいろな立場からのものの見方を学び、自分の考えをまとめていく作業の重要性を感じた。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。