『公共哲学とはなんだろう [増補版]』桂木 隆夫

 勁草書房。副題『民主主義と市場の新しい見方』。
 前半部では、公共哲学の考え方として、ハーバーマスやアーレント、サンデル、ヒュームといった人たちが主張していたものを紹介している。著者の考え方はこの中でもヒュームにつながるモラルサイエンスを基礎としているのであるが、公共哲学全体をある程度俯瞰して眺めているといっていいと思う。そして後半部では、ゲーム理論と囚人のジレンマを例にした他者の問題、民主主義や市場の問題、寛容という視点から見た公共哲学、公共精神とは何かなどについて概説している。
 囚人のジレンマの話や、日本人独特の公共精神のあり方の話など、個々の話題に関してはなかなかおもしろい視点を与えてくれていると思ったが、全体として公共哲学とは何かということでいえば、なんだかばふらっとした印象で、これだ、といえるような結論を示しているわけではないように感じる。公共哲学がどのようなものを扱ってきて、どのようにそれらを解釈してきたかというのはわかるのだけれど、では公共哲学とは何かと問われれば、なかなか一言では表しきれないという印象を持った。そんなわけで、本書のタイトルにもなっている問いに対する答えが明確になっているわけではないのだが、公共哲学がどういった系譜を辿ってきて今現在何を問題として捉えているかということについてなんとなく知るには、まあいい本なのではないかなと思う。この本で興味を持った人物や思想なりを他書で詳しく読むための底本としてはいい導入の本だと思う。私個人の話でいえば、やっぱりロールズの考え方に一番共感を覚えるということが再確認できたわけだし。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。