『「正しい政策」がないならどうすべきか』ジョナサン・ウルフ

 勁草書房。Jonathan Wolff。大澤津、原田健二朗 訳。副題『政策のための哲学』。
 私は勘違いして買ってしまったのだが、本書は、政治家等が正しい政策を示さなかったら我々国民はどういう選択をすべきか、という本ではない。むしろ逆に、国にとってある問題が生じたときに、「正しい政策」というものが存在しない場合に、政府や国がどういう政策をとるべきか、ということについて書かれている。つまり、本書の中で取り上げている動物実験、ギャンブル、ドラッグ、犯罪と刑罰、障碍、自由市場などについては、そもそも「正しい」といえる政策などなく、どの政策をとるにせよ一長一短があるので、それらのバランスをどうとっていかなければならないのかということが重要になるというわけである。そして、それらの問題を考えるときに、政治哲学や公共哲学を扱っている哲学者がどのようにそれらに関わっていくか、関わることができるのかについて考察されている。哲学の立場から論理的に導き出された答えが、必ずしも政策に直結していくわけではない。そこには国民の間に醸成された空気みたいなものや、政治的な思惑なども絡んでくる。そんな絶対的な「正しさ」が存在しない中で、どのような政策をとっていけばいいのだろうか。
 本書に中にきっちりとした答えが示されているわけではない。しかし、その方向性は示されている。本書はイギリスの例に基づいたものであるけれど、日本においてもその考え方そのものは適用できる。動物実験、ギャンブル、ドラッグなどについて善し悪しを判断することは、我々が思っている以上に複雑な事情を抱えていて、一筋縄でいかないことに驚きを感じる。ともすれば単眼的思考に陥りがちな我々から、複眼的思考を取り戻してくれる本だと思う。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。