『ヒットの崩壊』柴 那典

 講談社現代新書。
 言われてみると、2000年以降のヒット曲を思い出そうとしてもなかなかこれといった曲が思い浮かばない。それでも曲名を挙げられると、ああ、そういえば、と思う。でもこれが2010年以降と言われるとさらに頭の中に出てこなくなる。年のせいかな、と思っていたのだが、どうもそれだけではないらしい。音楽を巡る環境は確実に変化しているのだという。ヒット曲といえばオリコンチャート上位曲というのが当たり前だと思っていたが、ここ5年ほどの年間1位の曲はAKB48の曲が占めている。その前は嵐。しかも知らない曲ばかり。AKB48の曲は数曲知っているが、それらは1位ではない。何が起こっているのか。そう、CDの売り上げが即ヒット曲という時代は終わったのだ。
 著者はそこら辺の事情について、プロデューサーやアーティストらへのインタビューや取材をとおして明らかにしていく。音楽無料配信サービスの登場、フェスの興隆、テレビにおける生音楽番組の隆盛は何を意味するのか。ヒット曲がなくなったわけではない。ヒットの意味するところが変わっただけではないのか。そうやって、今後の音楽の未来を占っていく。これからの音楽はどういう方向に進んでいくのであろうかと。
 著者の分析はなかなか的を射ているように思えて、興味深く読んだ。と同時に、私はこの音楽の流れの中にはいないこともまた強く感じた。私は時代遅れなのだろうか。いや、そうではないと思いたかったが、時代の流れに取り残されていく自分を想像して、少し悲しくなった。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。