『多数決を疑う』坂井 豊貴

 岩波新書。副題「社会的選択理論とは何か」。
 物事を決める時、あるいは選挙、投票。そんなとき当然のように多数決によって選ぶことが多い。そしてそれが民主的なやり方なのだと多くの人に思われている。でもそれは本当だろうか、ということを本書は問うている。
 例えば3人の候補者がいる選挙を考えたとき、原理的には3分の1を超える得票が得られれば、その他の3分の2弱の人が、絶対にその人が嫌だと思っていたとしても当選するということがありうる。しかし多数決ではなく、ボルダルールというものを使うと、当選しないことも出てくる。ボルダルールとは、1番いいと思う人には3点、2番目には2点、3番目には1点というように点数を割り付け、投票を行うものだ。このやり方の方が民意を反映しているといえないだろうか。本書でも検討しているように、ボルダルールに欠点がないわけではない。でも、単純な多数決よりも民主的と言えないだろうか。
 今のはほんの一例であるが、 多人数で物事を決めるやり方は、多数決以外にもいくつも考えられる。比例選挙区制やトーナメント制もその例のひとつだ。その方法の選び方次第で、結果もまた違ってくる。「多数決は民主主義だ」とか、「多数決で決めたんだから負けた方は従わなければならない」とか、逆に「民主主義は少数意見をくみ取ることだ」とかいろいろ言われるけれど、ことはそう簡単な話ではなさそうだ。この本は、そんな風に「多数決」を批判的に検証して、社会的選択理論とは何かということを読者に教えてくれる。それと同時に、民主主義とは何かということを読者に深く考えさせる。今の社会の仕組みのあり方は、本当にこのままでいいんだろうか、と。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。