『森のノート』酒井 駒子

 筑摩書房。
 絵本作家である酒井駒子による初の画文集。右ページにタイトル、左ページに著者の絵があって、ページをめくると見開きでひとつのエッセイが書かれている。それが36編つながって、この本ができあがっている(絵は36よりも多く収録されているけれど)。絵とエッセイの内容はあまり関連性が無いように感じるが、もしかするとそれは私の読みが甘いせいであって、実は深いところでつながっているのかもしれない。都会と山の家を行き来しながらも、主役はやっぱり山の家である。昆虫や動物、植物の固有名詞がたくさんでてくる。接続詞を使わずに淡々と文を連ねていく彼女の文体は、読者の理解にとっては親切ではない。けれども、そうやって目の前の情景を綴っていくことが、逆に読者に新鮮な感覚を与えている。一見関係がないかのように思えるふたつの文をつなげる作業を読者に委ねることによって、一筋縄ではいかない自然の摂理に気づかせてくれる、そんな気がする。
 黒い下地の上に絵の具をさっと重ねていく彼女の絵に描かれた子供たちは、静謐な画面の中でほとんど声を発していないけれど、iPhoneに搭載されたLIVE動画のように動きの中にいる。その動きから、声は聞こえなくとも子供たちの感情が伝わってくる。
 酒井駒子のファンであれば、一冊手元に置いてあってもいい。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。