『Soft Landing』矢野 顕子

 2017年。
 ピアノ弾き語りアルバムとしては5作目となる。思い返すと、1作目の『Super Folk Song』からもう25年も経つ。私が矢野顕子の曲を初めて聴いたのが『Super Folk Song』というまさにそのアルバムに入っていた同名曲で、隣の部屋のテレビから流れてきたその曲を聴いて、え、こんな音楽ってありなの、という強烈な印象を受けたのを覚えている。本作の最後には『Super Folk Song Returned』という、それの続編に当たる曲が収められている。メロディは一緒で、歌詞は糸井重里が新たに書き起こしたものだ。
 このアルバムで矢野は、初めてベヒシュタインピアノを使って録音している。透明感があって聞こえるのはこのピアノのせいなのか、エンジニアである吉野金次のお陰なのか。
 全体的には奇をてらったような構成のややこしいアレンジはしておらず、聴きやすいアルバムだ。ただし、カヴァーとオリジナルが適度に混じっているが、(いつものことだが)カヴァーの原曲のイメージは矢野顕子節に変えられている。『Over』なんてサビに入るまでO.P.KINGの曲だと気づかなかった。この曲がカヴァーされていること自体驚きではあったが、矢野は曲を作ったYO-KINGのファンなのだそうだ。
 『Soft Landing』は「宇宙船がロケットエンジンの逆噴射で速力をおさえながらゆっくりと着陸すること」らしいが、なんだかアルバム全体がいい具合にやさしく、矢野のピアノと声からなるどこか違う世界の地面に着地したみたいだ。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。