『「正義」がゆがめられる時代』片田 珠美

 NHK出版新書。
 2016年に相模原市の障害者施設「津久井やまゆり学園」で起きた大規模殺人事件の背景を主軸にして、現代において「正義」がどのようにゆがんでしまったのかを論じた本。
 弱者攻撃、平等が崩れた時代背景、コスパ主義の蔓延、強い被害者意識と懲罰欲求などにより、生活保護バッシングや芸能人の不倫攻撃、店員や駅員への暴言、暴力などが生まれてきた経緯を考察している。
 数多くのデータを引用した筆者なりの主張は、基本的にはそう大きく的を外したものではないように思う。しかし、そのデータの扱いや論理展開は非常に雑であり、飛躍も多い。筆者の思いと統計的事実がごちゃ混ぜになって、だらだらと並べられているだけの印象があり、筋が見えてこない。事実と筆者の思いをうまくつなげる文章構成になっていないのは実にもったいない。もうちょっと再構成し直したら、もっと説得力が増しただろうに。また、本書のタイトルには違和感を覚える。この本は正義を真っ向から論じたものではなく、「正義」という言葉は主題ではなく、筆者の主張を補佐するキーワードのひとつにすぎない。評論というよりは、 エッセイとして読むのがいいかと思う。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。