『FACTFULNESS』ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド

 日経BP社。上杉周作、関美和 訳。副題「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」。
 世界はどんどん悪くなっている。格差がどんどん広がっている。そう信じる人は多いけれど、本当だろうか。著者はノーベル賞受賞者などの専門家を含む世界中の多くの人にいくつもの選択問題に答えてもらった。しかしその結果は、適当に答えたよりもずっと低い、つまりサル以下の正答率しか得られなかったのだという。例えばその質問とは、「世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?」、「いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいる?」といったものだ。答えの多くは、より悲観的な見方をしていたというのだ。
 それではいけない。事実に基づいた世界の見方をきちんとしていこうじゃないか、というのが本書の主旨であり、それが著者のいう「ファクトフルネス」という言葉である。事実を正しく捉えられない原因として、著者は10の思い込み(本能)を挙げ、その思い込みに縛られずにデータを基に世界を正しく見ることができるようにするためにはどうすればよいか、読者をファクトフルネスの世界に導く。
 分断本能、パターン化本能、犯人捜し本能など、確かにそういったステレオタイプなものの見方は改めた方がいいことは強く感じる。ニュースや口コミに惑わされないように、いかにそれらに批判的に向き合えるか。また、そうやって向き合っている自分自身にもいかに批判的になれるか。この本は、より多くの人が事実に基づいた世界の見方ができるようになるための、大きなヒントを与えてくれる。
 ただし私はこうも感じる。確かに本書は正しい事実を見つめる方法を教えてくれる。しかし、その事実と向き合ったあとにどういう結論を導き出すかについては読者に委ねられている。見方を変えると、著者がファクトフルネスを基に私たちに提示したメッセージそれ自体にも間違いがあるかもしれない。つまり、この本そのものに対しても、私たちは批判的になるべきであり、著者はそれを求めているのではないかと。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。