『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』佐藤 航陽

  NewsPicks Book(幻冬舎)。
 現代及び未来において、お金はどうなっていくのか、経済はどうなっていくのかについて、著者の考えを綴った本。
 フィンテックを便宜的にFintech1.0とFintech2.0に分け、前者を「すでに存在している金融の概念を崩さずに、ITを使ってその業務を限界まで効率化するようなタイプ」、後者を「近代に作られた金融の枠組み自体を無視して、全くのゼロベースから再構築するタイプ」としている。例えばFintech1.0はAIを使ったロボアドバイザー、スマートフォン決済、クラウドファンディングであり、Fintech2.0はビットコインなどであるという。そして、本書の「お金2.0」とは、もちろんこのFintech2.0から来ている。
 今までは国が発行する「お金」つまり貨幣を中心にした資本主義が主流だったけれど、これからは「お金2.0」などに代表される価値主義に移行、あるいは価値主義と併存していくんじゃないかという著者の指摘はなかなかにおもしろい。「お金2.0」というとちょっと誤解が出そうなので補足すると、価値主義は仮想通貨みたいなものばかりを指すのではなく、今まで「お金」では表現できなかった、データの蓄積度だとか信用だとかYouTubeなどでのおもしろさだとか、さまざまな「価値」全般を指している。
 さらにおもしろいなと感じたのは、この価値主義経済というのは誰でも勝手に作ることができて、そんないろんな経済(資本主義経済だけではないということ)がたくさん並立した社会がやってくるんじゃないかということだ。「お金」で社会が回るんじゃなくて、「価値」で社会が回る。みんなは「お金」だけにとらわれることなく、自由にいろんな経済を組み合わせて利用すればいい。お金儲けだけがあがめられる時代は終わり、お金がなくても(というかお金のことを考えなくても)生きていくことができる時代が来ると。
 ベーシックインカム、巨大企業による生活インフラの無償化、トークンエコノミーなどにより、「人間はお金や労働から解放され」ると予測する著者の考えはあまりに現実を無視した夢物語ではないのか、とする向きも当然あるだろう。しかし半世紀前にはこんなに当たり前のように皆がスマホを持ち歩く時代など考えられなかっただろうから、著者の指摘を荒唐無稽な話だと捨象するのはちょっと保守的すぎると思う。未来予想図のひとつとして十分耳を傾ける価値はあるだろう。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。