『本当にわかる心理学』植木 理恵

 日本実業出版社。
 心理学といえば、フロイト、ユング、アドラーなどを思い浮かべる人が多いだろう。しかし彼らのアプローチは「深層心理学」といって、科学的なものではなかったのだという。それに対して現在の心理学研究の中心になっている「実験心理学」は科学的アプローチをとっていて、本書はこの科学的な心理学の成果を読者に知ってもらうことを目的としている。
 この本の章の立て方はちょっと変わっていて、心理学の手法別に分類されている。こんな感じだ。「現象から見える心理学」「実験で測る心理学」「観察で見抜く心理学」「理論を整理する心理学」「技法を提示する心理学」。これだけを見るとなんだか難しそうに感じるかもしれないけれど、実際に書かれていることは、「美男美女であることは本当に得か?」「人をやる気にさせるにはどうすればよいのか?」「偽りの記憶が生まれるのはどういうときか?」のように、ふだん私たちが生きていて、ふっと頭をよぎるような素朴な疑問について、上記の分類に振り分けただけなので、そう難しいわけではない。
 本書のいいところは、きちんとしたデータに基づいた科学的な心理学の成果を取り上げているという点にある。想像とか思いだけで出来上がった心理学とは一線を画しているのがいい。
 ただ、最後の「技法を提示する心理学」だけは、必ずしも科学的とは言えないのではないかと感じた。この章は心療内科やカウンセリングにおける臨床の場で用いられる方法論を解説しているのだけれど、心理療法というのはまだまだ経験に頼るところが多いのかなという印象を持った。
 とはいえ、全体としては現代の心理学全般をバランスよく俯瞰した、きちんとしていて信頼のおける本であることはおそらく間違いはない。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。