『ケインズとハイエク』松原 隆一郎

 講談社現代新書。副題「貨幣と市場への問い」。
 マルクスが亡くなった年に生まれたケインズと、その16年後に生まれたハイエク。ふたつの世界大戦と世界恐慌を共に経験した二人の経済学者の思想を追う。
 何かと比較され、現代まで大きな影響を及ぼしている彼らは、対立した学説を唱えているとよく言われる。しかし実際のところは、ときに反目しながらも、尊敬し合う仲でもあったらしい。同じ問題意識から出発してもまったく違うアプローチをとり、まったく違う結論に至るというところは実におもしろい。
 現実の問題に対処するための方策をマクロ的に考え、時代時代で対応方法を替えていったケインズと、もっと経済をミクロな複雑系ともいえる観点から眺め、遠くを見つめていたハイエク。私にはそういう風に二人が見えたのだが、その理解は合っているのだろうか?と言うのも、この本は新書とは思えないくらい容赦なく専門用語を並べ立てているので、よくわからなかったところが多かったからだ。どこがケインズのことでどこがハイエクのことか、注意深く読み進めていかないと、途中でしばしば路に迷う。
 内容がかなり専門的なので、経済学をさらっとでも学んだ人向けなのだと思う。経済学を学んだことのない読者がこの本に挑むとしたら、その前にケインズかハイエクどちらかひとりの思想をきちんと頭にたたき込んだ上で本書を読むと、二人の思考の違いがよくわかることだろう。個人的にはハイエクの考え方はなんだか発散の方向に向かっているような気がするので、ケインズのアプローチの方が好みだけれど、ハイエクの方が現代的思考に近いのだろうな、という印象を持った。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。