『時間とはなんだろう』松浦 壮

 講談社ブルーバックス。副題「最新物理学で探る「時」の正体」。
 タイムマシンに乗って未来や過去に行ったり、はたまた時間を止めてみたりと、ファンタジーの世界でも「時間」はときに重要な役回りを演じている。でも実際に「時間」は何かと考えると、時計とどう違うのかだとかいろいろとわからないことがたくさんある。
 この本はそれらの質問に対して直接の答えを与えてくれているわけではないが、最新物理学の観点からみた「時間」の概念を、やさしく丁寧に、難解な数式などは使わずに教えてくれる。
 そこで肝となるのが、「時間」と「運動」の関係である。著者はそこから話を始めて、ガリレオやニュートンの運動法則、アインシュタインによる特殊相対性理論、一般相対性理論、マクスウェルの電磁波の存在予想、量子論、弦理論(ひも理論)と、過去から現代に向かって「時間」の概念がどのように変遷、発達してきたのかをわかりやすく解説している。
 いや、どうだろう。わかりやすくはないかもしれない。個人的な読後感で申し訳ないが、次のような感想を持った。読み進めていると、ものすごく速い宇宙船に乗っている人は地上の人よりも時間がゆっくり動くという相対性理論の話くらいまでは具体例を想像しやすいが、量子論が絡んでくる頃から抽象的な議論が多くなって、理解は難しくなる。最後の方になると、「時空」の話はしているんだけれど、今までふつうに「時間」と呼んでいたものが、実は「時間」ではなかったんじゃないかみたいな、変に哲学的な思考に陥りそうな自分に気づき、狐につままれたような気分にもなる。
 ちょっと残念なことに、「時間」とは何か、明確な答えはもうちょっと先の未来にならないとわからないみたいな締めくくりになっている。でも現在の科学ではここまで「時間」の正体に迫れているんだよ、というアピールはよく伝わってくる。全体としては、「時間」の話というよりは「物理」の本として、とてもよくできた入門書なのではないだろうか。「時間」をネタにして物理学の歴史を解説しているのだと思う。そうやって考えると、これ以上簡単に物理学の歴史を振り返るのは逆に難しい気もするので、一般の人が理解できるかできないかのギリギリのところを攻めているという点で、絶妙なサイエンス本になっている。「物理」はよくわからないと苦手意識を持っている人なんかに、実はオススメなのかもしれない。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。