『Folding Space』Spencer Elliott

 2019年。スペンサー・エリオットのソロギター・アルバム。Candyrat Recordsからのリリースとしては3枚目となる。
 彼は元々パンクやオルタナティブのバンドでギターやヴォーカルをやっていた人だが、今はソロギタリストとして活動している。ギターのジャンルとしては、いわゆるニューエイジと言われるヘッジスやドン・ロス、アンディ・マッキーなどの影響が色濃い。ちなみに、このアルバムのエンジニアとプロデューサーを兼ねているアントゥワン・デュフール(Antoine Dufour)も同様の傾向を持つギタリストだ。
 このアルバムは、これらのギタースタイルの忠実な後継者としてのスペンサー・エリオットの音楽性が遺憾なく発揮されているように感じる。パーカッシヴなボディヒットを加えつつの正確無比なフィンガリング、ちょっと影のかかったような落ち着いた音色。曲全体の構成の安定感。なお、盤名の『Folding Space』は、フランク・ハーバート(Frank Herbert)のサイエンス・フィクション『Dune』の中にでてくる言葉から採られたそうで、宇宙旅行的なニュアンスがあるらしい(デヴィッド・リンチが1984年に映画化している)。
 聴いていてとても心地いいので、ものすごく好きなアルバムだ。ただ、あまりにもよくできすぎているといえばいいのか、このジャンルの特徴的な部分を捉えすぎているといえばいいのか、そんなところがちょっとスペンサー・エリオットらしさというのがどこにあるのかわかりづらくさせている部分があって、もっとはじけちゃえばいいのに、と思わないでもない。でもまあそれは聴く側としてのわがままで贅沢なお願いなのかもしれない。この人はもうこれで完成してしまっている感があるので、この先新たな領域に入ったらどんな化け方をするのか、とても楽しみだ。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。