『“主線なし”イラストの描き方 』ア・メリカ

 翔泳社。
 “主線なし”イラストとは、輪郭線のないイラストのことで、色(明度、彩度、色相)の違いによってモチーフを表現したものだという。輪郭線のないイラストっていうけれど、油絵とか水彩画のような線描のない絵ってふつうにあるのに、それとどう違うんだろうと思って、本書を手にしてみた。
 3分の1くらい読んで、ああ、これは絵画のことじゃなくてイラストのことなんだ、という至って当たり前のことにようやく気づき、そのあと急におもしろくなった。この本は「デフォルメ」という観点をとても重要視しているのだ。著者は主線なしイラストの4大要素として「デフォルメ」「テクスチャ」「立体感」「色」を挙げていて、それぞれについて実にわかりやすい解説をほどこしている。そういう変な腑の落ち方をしてからは、逆にこれって絵画を描くときにもよく当てはまるんじゃないか、という反対向きの発想も自分の中に出てきて、楽しみながら学習することができた。
  中でもとてもおもしろいなと思ったのは、シルエットを描いてから中身を細かく描いていくやり方だ。私はふだん透明水彩を多用するので、濃い色を先に塗ってそれから薄くしていくことができない。そのため、ついシルエットの重要性を忘れてしまうことが多い。スケッチ程度の水彩ならあまり考えなくてもいいのかもしれないけれど、ちゃんとした作品をつくるときには、シルエットを検討するためのラフを描く工程を入れておくと、もっと説得力のある絵を描けるようになるんじゃないかという気づきを得ることができた。
 この本は初心者向けといったような顔をしながらも、絵やイラストを描く上でとても重要なポイントを、しっかりと読者に示してくれているように感じる。しかも小難しさがまったくない。一応Photoshopを使って描いているけれど、このソフトを使わない人にも十分に役立つ本だ(付録ダウンロードはフォトショデータが多いので、Photoshopを使っている人はさらにうれしいことと思うが)。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。