『思いつきで世界は進む』橋本 治

 ちくま新書。副題『「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと』。
 本書は、橋本治が筑摩書房のPR誌「ちくま」に2014年から2018年にかけて連載していたコラムをまとめたものである。といってもそのまま時系列順に並んでいるわけではなく、担当編集者がテーマごとに並べ直したものだ。副題は「遠い地平を俯瞰的に眺めて、想像力だけを地に下ろして現実を低く見る」ということらしいが、白状すると私にはそれの意味するところはわからない。ただし当時の時事ネタを扱っていることだけは確かで、それについて言いたい放題書いているというのが、たぶん真相なのだろうと思う。
 橋本の著書は何度か手にしたことはあるが、こういった時事ネタものというのはあまり読んだことがなかった。おそらくはこのようなPR誌に掲載するコラムという性質上の問題なのだろうが、他の著作に比べると、あまり細かな資料を読み込むことをせずに、その場その場で思ったことをただつぶやいているだけなんだな、という印象を受ける。雑といえば雑、素朴といえば素朴、老人の戯言といえば戯言みたいな、なんか居酒屋でのやりとりをそのままテープに起こしてしまったような感じがある。
 それはさておき、トランプ、ヒラリー、安倍、ハメネイ、キャメロンなどの名前と、その時々の出来事をこうやって眺めてみると、この4年間は結構激動とも言える時代だったのだな、と感じる。そして、これらの時代を著者が切り取ると、ああ、世界はこういう切り取り方もされうるのか、と新たな視点が見えてきて、目から鱗が落ちる気分になる。橋本治という人はちょっと他の人とは違って、同じ物事を見ても妙なわかり方をしてしまう傾向がある。『橋本治という行き方』という本も出ているけれど、まさにそういう独特な感じが常につきまとっていて、ハッとさせられる瞬間が多い。
 ああ、またこの人好き勝手言ってるな、みたいに受け流すことももちろん可能なんだけど、いやいや、もしかしたらこっちの方がありもしない常識みたいなものに捕らわれすぎていて、近視眼的なものの見方をしていたのかも、と自分の視野を広げるためにこそ、彼の言葉を受け取るべきなんじゃないかと思う。SNSやネットニュースばかり見ていると、自分に都合のいい記事ばかりが目に入ってきがちだけれど、いろいろな本を読むと、自分とは違った世界に触れることができる。橋本治の著作を読むと、いつもそんな世界が広がる楽しさを覚える。もちろん彼の言うことがすべて正しいわけはなく、それをも批判的に読むことが重要なのであろうが。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。

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