『悲観する力』森 博嗣

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 幻冬舎新書。
 著者のいう「悲観」とは、「思いどおりにいかないこと」に対してきちんと考えることだと言える。昨今、楽観的、前向きに生きるべきで、悲観的、後ろ向きに生きるべきではないとの意見が趨勢となっているが、本当にそうだろうか、と疑問を投げかける。楽観、悲観ということと、前向き、後ろ向きということはちょっと違うということは本書でも触れられているのだが、ざっくりと言ってしまえば、つまりそういうことである。
 いろんな可能性を考えて、それに備えて準備しておくというのは、リスク管理をきちんとしているということである。それはもちろんとても大事なことで、その心構えについてはとても共感できる。ただし、それは「悲観」なのかといえば、私はそういう心構えのことを「悲観」と考えたことはない。だから著者の使う「悲観」という言葉の使い方には違和感を覚える。本書で述べられている主旨については賛同するが、それを「悲観」「楽観」という二分法に集約してしまったところは、ちょっと強引すぎたんじゃないかな、という感想を持った。
 過去に対しては楽観し、未来に対しては悲観するというのは、なかなかいい考え方だと思う。あとがきで、ここに書かれていることは「僕はこうだ」ということで、「みんなもこうしなさい」と主張する気はないと書いてある。それも彼の言う「悲観」の表出なのか、と思い、少しにやけてしまった。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。