『名画の読解力』田中 久美子

 エムディエヌコーポレーション。副題「教養のある人は西洋美術のどこを楽しんでいるのか!?」。
 本書で取り上げられているのは「物語を紡ぐ絵画」ということで、宗教画、神話画の解説に重きをなしている。第1章で古代ギリシャ・ローマから現代美術までの美術史を概観したあとは、聖書、神話でそれぞれ1章を割き、最後の第4章で、ベラスケスの『ラス・メニーナス』やフェルメールの『絵画芸術』など7作品を取り上げ、詳説している。
 この場面の裏にはこういった物語が潜んでいるだとか、百合を持っていたら誰、子犬がそばにいたらこういう意味だとか、絵画の裏に秘められた物語を読み解くヒントになるアトリビュートやシンボルの勉強になる。
 ただ、聖書、神話の世界はあまりに膨大なものだからしょうがないのかもしれないけれど、なんだか登場人物の人間関係があまりにややこしく、解説についてもある一部分を切り取ってきたものを淡々と並べているだけという感じがして、正直なところ楽しめはしなかった。上でも少し書いたが、まさに「お勉強」という印象が強く、私は評論的なものを期待して本書を手にしたのだが、これは名画の解説本だった。
 そういうことでいうと、解説本としてはしっかりと書かれているので、感じるだけじゃなくストーリーを楽しみながら絵画を見たい、でも今は知識がないという人には、いい本だと思う。ただし入門者向けではなく、初級者以上の美術的興味を持っていないと、難しいかもしれない。副題の「教養のある人は」という一言はちょっと鼻につきますね。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。