『ルポ 人は科学が苦手』三井 誠

 光文社新書。副題「アメリカ「科学不信」の現場から」。
 地球温暖化、進化論、ワクチンの安全性など、科学的には真とされている事柄に対して、根強い否定論がわりと多くの人に行き渡っている。著者は、その傾向が特に顕著に見られるアメリカにおける取材をもとに、その原因、対策などを紹介している。
 これらのうち、進化論の否定というのは日本人にとってあまり馴染みがないかもしれない。彼らが何を信じているかというと、「神が過去1万年のある時に人類を創造した」という創造論の方である。米国人に対するある世論調査(2017)によると、この創造論を支持する回答が38%だったという。それに対して「神の関与なしに」進化したとする進化論を支持したのは19%にとどまったのだという(他の人の多くは「神の関与あり」で進化を支持)。同様に、地球温暖化(狭義には「人為的な」地球温暖化)についても、同じように意見が割れているようだ。
 まったく科学的ではないこれらの考えがどうして人々に信じられているんだろう、という疑問を解くために色々と取材を重ねたものをまとめたのが本書である。
 科学の対立軸として挙げられているのは主に政治と宗教で、それらの関連が、事象としてはよくわかるように書かれている。そのあたりを読むと、「人は科学が苦手」というよりは、科学を信じていないということなんだな、というように感じる。結局科学なんてほとんどが仮説の世界だから、つけいる口実なんていくらでもあるんだろう。まあ、著者はそこまでは言っていないけれど。
 どうやったら科学不信を取り除くことができるのかについても考察が重ねられているけれど、本書全体を通じてちょっと気になることがあった。それは著者が科学の正当性を頭から信じて疑っていないように見受けられることだ。私も一応科学は信じているけれど、それはどちらかというと科学の方法論を信じているということであって、科学成果を信じているのとはちょっと違うので。ただ、それは私の読み込みの薄さのせいで、本当に気のせいなのかもしれないのだけれど。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。