SB Creative。副題「圧倒的に心を揺さぶる作画流儀」
アニメーターである著者が手の描き方を教えてくれる。本文でも書かれているが、これはあくまで、アニメやイラストにおいてどのように手を描けばそれっぽく見えるか、ということを解説している本だ。だから、類書にあるような、手の骨や筋肉、腱の構造などの説明はほとんどなされていない。また、実際にはあり得ないような手の形をしているのもある。
上記で述べた注意点は、もちろん著者もそれと知った上で解説している。いかに魅せるかということを主眼にしているから、そこは問題とならない。芸術としての具象画ではないし、デッサンの本でもないのだから。
逆に、絵画として手の描き方を学びたいのならば、他の美術書、例えば美術解剖学についての本などを読んだほうがいい。ただし、美術解剖学の本は気軽にイラストを描いてみたいだけの人には難しくて、読むのがいやになってしまうと思うけど。
その点、この本は気軽にそれっぽいイラストやアニメを描きたい人にとっては、とても敷居が低くてわかりやすい。そして、ほんのちょっとした手のポーズだけで人物の性格を表現することが可能だということも、この本を読めばわかる。そのあたりの演出の方法については他の本ではあまり書かれていないので、かなりハッとさせられる。
マンガ、アニメ、イラストなどを描く人で、手を苦手としている人にはとてもいい本だと思う。今までモヤモヤとしていた部分がこの本によって腑に落ちる、ということがきっとあるんじゃないだろうか。