『エンジニアのためのデザイン思考入門』東京工業大学エンジニアリングデザインプロジェクト

翔泳社。東京工業大学エンジニアリングデザインプロジェクト、齊藤滋規、坂本啓、竹田陽子、角征典(以上著者)、大内孝子(編者)。

本書は、東京工業大学で実施されている(当時)エンジニアリングデザインプロジェクト(EDP)の講義を通して、デザイン思考について紹介したものだ。講義とはいっても、ワークショップみたいなもので、実際のユーザーへの共感(というかニーズ)をうまく拾って、実際の製品の制作まで持っていく過程を学生に経験させている。

正直なところ「デザイン思考」って何?というのが今までの私の頭の中だったし、この本を読んでもやっぱり「?」な部分はある。実際「デザイン思考」という言葉は幾通りかの定義があるみたいで、デザイン思考を語る人によっても示している対象が違っているらしい。とはいえ、根本の幹は一緒なんだと著者らは述べている。それが何なのか、やっぱり私には「これだ!」といえるものが湧いてこなかったけれど。

まあ、でも、デザイン思考が何であるにせよ、この本は読んでいておもしろかった。受講者は基本的には東京工業大学の学生だけれど、それだと偏りがあるということで、美大生や社会人も含まれている。それがいくつかのグループに分けられていて、それぞれのグループで何かしらのものを作る。

何がおもしろいって、主にふたつ挙げられる。

まずは実際のものづくりのひとつのやり方を読者が疑似体験できること。そしてもうひとつが、東工大の学生と美大生の思考方法、感覚の違い。

私には特に後者の違いがとても興味深かった。私も理系の知人はたくさんいるし、絵も描いているから美術畑の知人もたくさんいる。ふだん彼(女)らの考え方の違いを意識することはあまりなかったけれど、この両者が一緒になって作業をすると、こんなにもその違いが表に現れてくるんだ、とびっくりした。どっちが良くてどっちが悪いということではない。どっちにも長所短所がある。

当事者たちも講義の最初の方はその違いに戸惑いを隠せないでいたようだけれど、それが回を重ねるにしたがい相互理解が深まり、両者の長所が活かされて製品にまで昇華していくというのには、ある種の感動を覚えた。

デザイン思考の実践例として、こういうやり方があるんだということで、参考になった。

shizukiaki

札幌で絵やイラストを描いています。音楽や読書も好きなので、ブログではいろいろなジャンルの投稿をしています。

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