Book&Design。美しいカーブと心地よい字並びのために。
Monotype社のタイプディレクターである小林章による文字のつくりかたの本。書体デザイナーといった方がわかりやすいかもしれないけれど、そういう職業があるかどうかはわからない。
この本はフォントをつくるためのソフトウェアの使い方を説明しているわけではなく、あくまで書体デザインをどうやっていくかについて解説している。
書体デザインといっても、アルファベットの文字や記号などをつくるだけじゃない(もちろんそれも大事だけれど)。文字と文字との間隔とか文字の高さとか、いろいろと考えなきゃならないことがたくさんある。
目の錯覚ってよくいうけれど、その錯覚を織り込んだ上でのデザインがとても大切だということも教えてくれる。例えば、一見直線と円弧だけをつなげたかのように見える字も、目の錯覚を調整して直線に膨らみを持たせたりしているのだという。本当の直線を使うと凹んだように感じるから、逆に膨らみを持たせて直線に見えるようにしているというのだから驚きだ。
文字と文字との間隔もそう。ただ機械的に並べただけだと同じ間隔に見えない。だからそこもちゃんと調整する。書体をつくる人の細かい気遣いに頭が下がる。
いかに読者にストレスを与えずに自然に読ませるかがとても大事なんだなあ。
最後に、この本ですごく気に入っていることがもうひとつある。ベクター線を引くのに避けて通れない、アンカーポイントの置き方や方向線の伸ばし方をきちんと図示して丁寧に解説してくれているところだ。その細かい調整方法は本当に実践で役に立つ。
著者はこれまでにも多くの欧文書体についての本を書いていて、それらのどの本にも外れはなかったけれど、本書も間違いなく「買い」だと思う。もちろん文字に興味のある人限定だけれど。